
0916 | 週刊テックラウンドアップ:AI、セキュリティ、オープンソースの今
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今週のテックと社会の話題をコンパクトに:AIの進化と混雑するインフラ、安全性をめぐる攻撃と監視の現実、開発者を支えるオープンソースの動き、そして人生を彩る小さな発明まで。聞きどころ満載の一冊です。
タイムライン
- 00:00:04 オープニング
- 00:01:00 AIの進化と推論需要
- 00:05:18 セキュリティと監視の現実
- 00:10:44 インフラと業界の変化
- 00:13:28 開発基盤の進化:Javaと理論
- 00:16:12 オープンソースとシステム
- 00:18:33 DIYハードウェアの挑戦
- 00:21:16 モノと時間の話:本・発見・持続性
- 00:24:23 クロージング
関連リンク
- The Inference Hardware Revolution of 2026
- Gemini 3.8 Live and 3.8 Live Extended Thinking
- Introducing System One Models and Jev
- We got admin access to Baseten's production GitHub in 25 minutes
- America's Driver's License Breach Is a National Security Disaster
- 25 years of mass surveillance is enough
- An Update on Wayback Machine Access
- CSS-Tricks in Limbo
- Alternatives to MinIO for single-node local S3
- Java 27 Released
- The k-server conjecture is true
- German Rheinmetall open-sources its Battlesuite connected weapon system protcol
- GEFS on OpenBSD: A Early Preview
- Show HN: Hacking a $20 4G wireless hotspot into a texting device
- Show HN: An e-ink frame that hears birds and draws them as 1800s illustrations
- Chopping up books when they're physically too big
- I can't stop thinking about Papua New Guinea
- Let's make quality the norm again
このエピソードは Bri によって制作されています。Bri は高度な AI 技術で、あなたが気にかけるフィードを聞くためのポッドキャストに変換します。お問い合わせは hi@bri.so まで。
Transcript
葵: どうも、こんにちは。葵です。
悠真: 悠真です。今日も一日分の話題を、じっくり深掘りしていきます。この番組は、話題を列挙するんじゃなくて、それぞれ「何が起きたのか、なぜ大事なのか、どこがまだ分からないのか」を二 人で考えながら進めるスタイルなので、今日もその調子でいきましょう。
葵: 今日のつながりはね、ちょっと面白くて。AIがどんどん速く、賢くなって、その裏でセキュリティの現場では穴がどう開いていくか。そしてプラットフォーム企業の判断や、誰かがOSを一から組み直したり、20ドルのガジェットを組み合わせて端末を作ったり。要するに「技術の上層と下層、その両方が同時に動いている一日」なんだよね。
悠真: うん、上はモデルの世界、下はドライバやファイルシステムの世界。どちらも人間が深夜に書いてるわけで。じゃあ、上から行こうか。まず2026年のAIの姿から。
葵: そう。IEEE Spectrumの見立てだと、2026年はもう「学習」より「推論」が支配する年になってるらしい。そして単に推論が多いだけじゃなくて、推論の中でも特に重いやつ、つまり思考型のモデルと、エージェントと呼ばれる自律的に動くプログラムが需要を急増させてる。
悠真: ここ、読み手によっては軽く流しちゃいそうだけど、構造的に大事な点だと思うんだよね。これまでのモデルって、質問に一度答えて終わり。でも思考型モデルは、答える前に長い思考プロセスを回す。エージェントはさらに、一つのタスクを解くために何十回もモデルを呼び出す。だから同じユーザーでも、従来の何倍もの計算を食う。
葵: その結果が、チップとメモリーの再設計を迫るという話。今の半導体って、訓練用の巨大な行列計算に最適化されてきた歴史がある。でも推論、しかも思考型とエージェントの推論は、需要的に違う。メモリの帯域がボトルネックになったり、長時間動き続ける工作負荷になったり。
悠真: チップを作る側からすると、これは方向転換を強いられる話だよね。売れるシェイプが変わってしまう。そしてここからが、この需要を実際に食ってる具体例。
葵: GoogleのGemini 3.8 Liveと、3.8 Live Extended Thinking。前者は自然な音声対話。後者はその名の通り、extended thinking、つまり思考を拡張したモードで、並列推論とバックグラウンドでのタスク処理ができる。
悠真: 音声対話って、実は技術的に難しいんだよ。人間は会話の中で「ちょっと待ってね」を許容しない。リアルタイムで、自然な間で、返す必要がある。それができると、AIが「話しかけられる存在」になる。で、Extended Thinkingの方は、裏で並列に考えながら、表では別のタスクを進めてる。
葵: これはまさにさっきの「エージェント需要」の顔だよね。一度のリクエストで、裏と表で複数の推論が走ってる。だからIEEE Spectrumの言う「チップとメモリーを再設計せざるを得ない」話と、Geminiの機能は、実は一枚岩の話。
悠真: もう一つ、今日リリース系のAIニュースとして面白いのがTypeSafe AI。Diogo Almeida、OpenAI出身の人が作ってる会社なんだけど、出してるモデルは「System One」と「Jev」。
葵: 何が新しいかっていうと、出力が「型付きの構造化データ」だってこと。で、レイテンシが70〜500ミリ秒。しかも「ハルシネーションがない」と主張してる。
悠真: ここ、ちゃんと分けるべきだよね。GPTとかGeminiみたいな汎用モデルと違って、これは「LLM的な言語生成の性能」で勝負してるわけじゃない。用途が完全に絞られてる。つまり「返答はJSONとか決まった構造で、70から500ミリ秒以内で、間違った値を生成しない」ことだけに最適化されてる。
葵: ね。だからハルシネーションがないっていうのは、ある意味で問題設定が違う。「自由に文章を書かせないから、嘘をつかない」。汎用LLMと競合するというより、汎用LLMでは不向きな場所、たとえばリアルタイムな処理パイプラインの中継地点みたいなところを埋める。
悠真: 悠真的には、ここは面白い方向。というのも、さっきのGemini 3.8 Liveみたいな大型のモデルと、System Oneみたいな70ミリ秒級のモデルは、実は競合じゃなくて階層になってる感じなんだよね。重い思考は上でやって、下は細かく速く構造だけ返す。
葵: それ、さっきのチップの話にも戻れる。推論需要って一様じゃなくて、「思考型の重い推論」と「System Oneみたいな軽くて速い構造化推論」が混ざってくる。だとしたら、チップ側も一つの最適化じゃなくて、複数の工作負荷にどう対応するかが課題になる。
悠真: そうそう。ただ、まだ分からないこともある。TypeSafe AIの「ハルシネーションがない」って主張は、どこまで検証されてるのか。レイテンシの数字も、どの条件下での話か。ここは新しすぎて、実運用でどうなるかはまだ誰にも分からない。
葵: うん。ただ、方向としては「AIを賢くする」のと「AIを速くて予測可能にする」の二つが並行して進んでるっていうのが、今日の一回目の見取り。
悠真: で、そのAIが動く土台に降りてみようか。セキュリティの話。まずStrixの事例から。
葵: Strixっていうセキュリティチームが、BasetenのGitHub admin tokenを取った。方法が、公開されてるDockerイメージを使って、たった25分。
悠真: 25分でadmin token。これ、何が怖いかっていうと、パブリックなDockerイメージって、普通誰もが「これは公開されてるから安全」とか「公開されてるけど中身は知らない」とか、どこかで鷲掴みにしてる。でも中に、いわゆる機密情報がうっかり残ってるってことがある。tokenがハードコードされてたり、ビルド時の履歴が残ってたり。
葵: で、これがadmin tokenだと、組織のレポジトリがまるごと読めたり、コードが改ざんできたりする。サプライチェーン攻撃の入口になり得る。
悠真: うん。ただ、この事例で報告されてるのは、Baseten側の対応が速かったってこと。修正はすぐにやった。で、報奨金はTシャツだけだったと。
葵: これ、ディスカッションで一番盛り上がる部分だと思う。セキュリティ研究者って、ほとんど無償で発見して報告してる。対して企業側が得た価値は、改ざん可能な組織のレポジトリが修正されたこと。Tシャツ。
悠真: この感覚のズレって、実は長期的な問題だと思う。というのも、報酬が低いと、善意の研究者が報告しなくなる。報告しないってことは、見つけても公開するか、あるいは闇に流すか。どちらにしても企業側にとっては良くない。
葵: ただ、ここで頑張りすぎないように。企業側にも事情はある。報奨金プログラムって、事実上予算も人も必要で、全社が整備できてるわけじゃない。それに、一度高額を払うと基準ができて、次から逃げられなくなる。
悠真: でも、25分で取れる穴と、Tシャツっていう報酬のギャップは、やっぱりおかしいよね。次、もっと深刻な方へ行こう。Nexus。
葵: Nexusっていうdark web上のサービスが、1.53億件の米国とカナダの運転免許証データを販売してた。元はIDScanへのハック由来。
悠真: 1.53億件って、アメリカとカナダの人口規模からすると、実質「相当な割合の大人」をカバーしてる数字。運転免許証って、氏名、住所、生年月日、顔写真。これは単なる個人情報というより、なりすましの完成品に近い。
葵: で、このニュースで指摘されてるのが、単に個人のプライバシー被害ではなくて、安全保障リスクだってこと。免許証は、色んな場面でID確認に使われる。つまり、なりすますだけで、システムに入り込める場所が多い。
悠真: ここ、さっきのStrixの話と実はつながってるんだよ。Strixは「公開されたDockerイメージ」からtokenを取った。Nexusは「IDScanという、どこかの企業のシステム」から免許証データを取った。つまり、どちらも「ある一つの企業の穴」から、規模の異なるデータが漏れてる。違いは、影響がその企業内で終わるか、社会全体に及ぶか。
葵: うん。で、この二つ目の話、解決策はまだ不明なんだ。IDScan側がどう補償するのか、免許証を持つ側がどう対処するのか。免許証って、変えられないんだよね。住所の変更はできるけど、「番号そのもの」は基本的に一生。
悠真: だから被害が長期化する。で、ここに第三の話を重ねよう。Bruce SchneierとCindy CohnがLawfareに書いてるessayで、9/11から25年、大量監視がどうなったか。
葵: 彼らの論点は、「大量監視は反テロという緊急事態の道具として始まったのに、今は日常の警察業務と商業利用の常態になった」ということ。
悠真: これは、さっきのNexusの話と、反対方向から同じ穴を突いてる感じがするんだよね。Nexusは「企業が集めたデータが、悪意ある第三者に流れた」。SchneierとCohnは「企業や政府が集めたデータが、もはや緊急事態でもなんでもなく、日常の目的で使われてる」。つまり、どちらも「集めることの問題」を指摘してる。
葵: ただ、二つは前提が違うんだよね。Nexusの話は、集め方が違法だった、つまりハックだった。でもSchneierとCohnの話は、集め方が合法だってこと。企業や政府が、法律の範囲内で大量に集めて、日常的に使ってる。これが一番たちが悪いというか。
悠真: そう。つまり「データが悪者に漏れる」のを防ぐだけじゃ解決しない。「そもそも大量に集める」習慣自体をどうするかという話になってる。
葵: あ、そういえば、ここに付随する話がもう一つある。Wayback Machine。
悠真: そう。Internet ArchiveのWayback Machineが、自動化されたトラフィックの大量アクセスを受けてて、429のブロックが実際のユーザーにも降りかかってる。Internet Archiveは「エラーが出たら連絡してください」と呼びかけてる。
葵: これは、さっきの話と、逆の側面でつながるんだよ。つまり、AIのエージェント需要が増えてるって話が最初にあったよね。エージェントって、ウェブを大量にクロールする。その結果、Wayback Machineみたいな公共的なリソースに負荷がかかって、人間が使えなくなる。
悠真: うん、これはまだ確定した因果ではないけど、今日のニュースの並びとして「推論とエージェントの需要増」の直後に「公共リソースへの自動化トラフィック」という話が来てるのは、示唆的だよね。
葵: さて、次は業界の話。DigitalOceanがCSS-Tricksを買収した。
悠真: CSS-Tricksって、フロントエンドの人には伝説的なサイトなんだよ。長年、CSSの技術記事を発信してきて、コミュニティの中で地位があった。それをDigitalOceanが買収して、チームを解雇した。
葵: そして、ドナルドの寄付として、DHHのOmarchyに300万ドル寄付した。
悠真: ここ、実は二つのニュースが一枚に重なってる。一つは「買収して解雇」。もう一つは「寄付」。そして一番謎なのが、サイトの将来について告知がないこと。
葵: つまり、コミュニティは「サイトはどうなるんだ」って状態のまま。買収の理由は、DigitalOceanがコンテンツ資産を欲しかったのか、SEOのためにドメインが欲しかったのか、分からない。
悠真: で、DHHへの寄付は、たぶんDigitalOceanの理念に近いOSS文化への投資なんだろうけど、コミュニティから見ると、「CSS-Tricksのチームを切って、その金を別のOSSプロジェクトに渡す」っていう、ピントがずれた感じに見える人もいるだろうね。
葵: 実際、これに対する反応は割れそうな話。寄付自体は悪いことじゃないし、Omarchyも価値のあるプロジェクト。でも、「その300万ドルがCSS-Tricksのチームに向かってたら、違う未来があったんじゃないか」っていう視点は消せない。
悠真: で、これは次の話と実はつながる。MinIO。
葵: MinIOっていうS3互換のオブジェクトストレージ、OSSとして長年使われてきたものが、実質的に放棄された。で、rmoffという人が、代替候補を評価してる。
悠真: 比較対象は、S3Proxy、RustFS、SeaweedFS、Garage、Ozone、Ceph。全部DockerとComposeで検証してる。
葵: ここで注目すべきは、「放棄」っていう現象。MinIOみたいな、ある種のデファクトスタンダードが、ライセンス変更とか戦略変更でコミュニティから離れると、代替が乱立する。そして代替が乱立すると、どれを選ぶべきかが難しくなる。
悠真: うん、rmoffの比較は、その「どれを選ぶべきか」を一つずつ確認してる作業。各候補のシンプルさ、機能の網羅性、運用の実感が違う。一つ一つは確実な比較なんだけど、結論としては「一概にどれが最善とは言えない、ユースケース次第」みたいな着地になるはず。
葵: これ、CSS-Tricksの話と同じ構造なんだよね。つまり、プラットフォーム企業の判断が、コミュニティの選択肢とインフラの形に直接影響する。DigitalOceanがCSS-Tricksをどうするかで、フロントエンド教育の質が変わる。MinIOの戦略変更で、みんなのストレージ選択が変わる。
悠真: で、ここから、次の話へ行けるんだよ。Javaの世界。
葵: JDK 27のGAがリリースされた。ポイントは四つ。G1が標準GCになったこと。TLS 1.3でポスト量子鍵交換に対応したこと。Structured Concurrencyが7回目のプレビューに入ったこと。Vector APIが12回目のインキュベータに入ったこと。
悠真: まずG1が標準GCになった話。これは今までの「Parallel GCがデフォルト」って時代の終わりで、レイテンシ重視の方向に舵を切ったってこと。で、ポスト量子鍵交換。これは、今日の「セキュリティ」の話ともつながるんだよ。
葵: そう、さっきのStrixやNexusの話と同じ、「セキュリティは今まさに改造中」っていうテーマ。量子コンピュータが実用的になったとき、現在の暗号が破られる。それを先回りして、鍵交換をポスト量子に対応させてる。
悠真: で、Structured Concurrencyが7回目のプレビューっていうのは、 Javaは変化が遅いって言われがちだけど、正確には「慎重に、何回もプレビューを重ねてから正式化する」スタイル。7回もプレビューをやってるってことは、それだけ設計にこだわってる。
葵: そしてVector APIが12回目のインキュベータ。これは、CPUのSIMD命令を使って数値計算を高速化するAPI。さっきのAIの推論の話に戻るんだけど、推論って、本質的には大量の行列計算。Javaでそれをやるとしたら、Vector APIが鍵になる。
悠真: つまり、JDK 27って、表面上は「Javaのバージョンアップ」なんだけど、下に引くと、「量子時代への備え」「構造化された並行処理」「数値計算の加速」っていう、今日の他の話題全部に接続する話なんだよね。
葵: で、理論の話。Coester、Koutsoupias、Zbysińskiの三人がk-server conjectureを解いた。arXiv 2609.15979。
悠真: k-server conjectureって、理論計算機科学で長年未解決だった問題。オンラインアルゴリズムの世界で、k台のサーバーが動いてる時に、どうやって最適に近い動きをするかという話。彼らの解法は、work-functionアルゴリズムを使った。
葵: これ、実務の話と「両輪」って言われる理由が分かるんだよ。実務では、さっきのStructured Concurrencyみたいに、並行処理をどう書くかっていう問題。理論では、k-serverみたいに「リソースをどう割り当てるか」の数学的限界。両方が同じ年に進んだっていうのは、計算機科学がバランスよく進んでる証拠。
悠真: ただ、理論の進展って、実務にすぐ効くわけじゃない。k-serverの解法が、明日のエージェントのスケジューリングに使われるかっていうと、まだ分からない。でも、将来誰かが実装するときの土台にはなる。
葵: ここから、オープンソースとシステムの話へ。
悠真: Rheinmetallが、オンボードAPIの「Battlesuite」の文書をオープンソース化した。DDS/XTypes基盤で、ライセンスはEPL v2.0とEULA。
葵: Rheinmetallって、防衛産業の企業なんだけど、そこがオンボードAPIのドキュメントをオープンにしたっていうのは、結構珍しい。防衛関係って、普通は完全クローズド。
悠真: DDS/XTypesって、分散システムの通信ミドルウェアで、たとえばロボットとか車両とか、リアルタイムの分散システムで使われる規格。つまりBattlesuiteは、戦車とか兵站システムとか、そういうものの内部APIの話。
葵: ここで面白いのは、「オープン化」の理由。たぶん、エコシステムを作りたいってことなんだろうね。防衛システムって、一社だけが完結できない。複数のサプライヤーが繋がる必要がある。そのためには、APIが開かれてないと、誰も参加できない。
悠真: これは、さっきのMinIOの話と逆の方向だよね。MinIOは「閉じていく」。Rheinmetallは「開いていく」。どちらも「オープンか閉か」っていう判断が、エコシステムの形を決める。
葵: で、もう一つ。Ori Bernsteinが、9frontのGEFSというcopy-on-writeのファイルシステムをOpenBSDに移植した。
悠真: GEFSって、スナップショットが取れるcopy-on-writeファイルシステム。9frontはPlan 9のフォークだから、結構独特の文化がある。それをOpenBSDに持ってきた。
葵: ただし、これは初期プレビューで、データ損失が期待されるって書いてある。つまり、まだ本番では使えない。
悠真: ここは「オープンソースの進化は、速さと堅牢性のトレードオフ」という典型的な状態にある。GEFSの設計は面白い。copy-on-writeでスナップショットっていうのは、ZFSとかbtrfsと同じ系譜の考え方。ただ、OpenBSDの世界では、こういう新しいファイルシステムは慎重に取り込まれる。
葵: 悠真の見方だと、これは「堅牢性を重視するコミュニティに、新しいアイデアが持ち込まれた」っていう段階。データ損失があるって明言されてるのは、むしろ誠実な報告だと思う。
悠真: うん。「使うな、でも見てみて」っていう状態。これが数年後にどうなるか。OpenBSDの正式なファイルシステム体系に組み込まれるか、実験のまま終わるか。
葵: さて、ここから一気に下の層へ。DIYハードウェアの話。
悠真: 20ドルの4Gホットスポット、MF800。そこにClicksのキーボードと、SHARPのディスプレイをくっつけて、openstickというプロジェクト経由でLinuxを動かして、メッセージング端末にした。
葵: つまり、どこにもそのままの形では売ってない端末を、自分で組み立てた。しかも、素材は「ホットスポット」。普通はポケットに入れてWi-Fiを飛ばすためだけのもの。
悠真: これが示してるのは、安いハードウェアの中に、実はLinuxが動くコンピュータが入ってるってこと。ホットスポットの中にも、それなりのSoCとメモリがある。それを「本来の用途」から解放して、別の端末に転用する。
葵: そして、これはClicksキーボードとの組み合わせだから、物理キーボードのスマホ、というか、BlackBerry的な形が自作できる。要するに「キーボード付きのLinuxメッセージング端末」っていう、市場ではあまり売ってないものを自分で作れる。
悠真: さっきのAIの話と対比すると面白いんだよ。AIの方は、巨大な演算資源で、速く賢い応答を作る。DIYハードウェアの方は、20ドルの機材で、遅くてもいいから、自分がコントロールできる端末を作る。どちらも「必要なものを得る」ための道だけど、極端に方向が違う。
葵: もう一つ、DIYの話。Fugleramme。
悠真: これはRaspberry Piにe-inkのディスプレイを繋いだフォトフレームなんだけど、ただのフォトフレームじゃない。BirdNET-Goで鳥の声を検知して、その鳥を1800年代風のイラストとして描画する。
葵: 全部ローカルで処理されてる。つまり、マイクで鳥の声を聞いて、それをAIで分類して、その結果を絵にしてe-inkに表示する。全部、家の中で完結。
悠真: これは、さっきのStrixやNexusの話と対比すると、「ローカルで完結する」っていう設計思想の良さが見える。クラウドに音声を送らない。だから、プライバシーの心配がないし、通信のレイテンシもない。
葵: で、デザインの選択も面白い。1800年代の鳥のイラストって、Audubonとか、そういう博物学的な挿絵の伝統がある。それをe-inkに表示するっていうのは、「技術的にはAIと音声処理、見た目は19世紀」っていう、時代が混在した作品。
悠真: 悠真的には、さっきの20ドルの端末も、このFuglerammeも、「AIを巨大企業が動かすだけじゃなくて、個人が自分の文脈で使う」っていう方向の具体例なんだよね。AIの話は、巨大なモデルと巨大なデータセンターの話になりがちだけど、その裏で、BirdNET-Goみたいに、Raspberry Piで動く小さなモデルがある。
葵: さて、最後の話題。ちょっとトーンを変えて、モノと時間の話。
悠真: 三つあるんだよね。まずMatt Kirklandの話。850ページ超のLonesome Doveっていう小説を、刃物と板と接着剤で、複数の巻に分割するっていう提案。
葵: これ、物理的な本の問題なんだよね。850ページのペーパーバックって、読んでる途中で手が疲れるし、バインディングが壊れやすい。特に長い小説を読み込むときは。
悠真: で、Kirklandの方法は、物理的に切って、カバーをつけて、一巻ずつ薄くする。単純だけど、実用的。
葵: これ、「本を損壊する」って考える人もいると思うんだ。でも、Kirklandの視点は逆で、「本を読みやすくする」っていう観点。物理的な本の「一冊」っていう形が、実は読書体験を制限してるっていう問題提起。
悠真: で、二つ目。1930年のMick Leahyの話。ニューギニア高地に、当時外界から完全に隔絶された、約100万人の住民がいたっていう発見。First Contactっていう記録で残されてる。
葵: 1930年だよ。20世紀になって10年経ってるのに、100万人の人が、外部の世界と一切接触してなかった。
悠真: これは、私たちの「世界はもう全部知られてる」っていう感覚が、実は歴史的に最近のものだっていう話。1930年には、まだ百万規模の未知が残ってた。
葵: さっきのAIの話と対比すると、面白い。「世界のあらゆる場所をデータ化して、モデルに収める」っていう現代の流れと、「世界の一部は、実は知られてなかった」っていう1930年の事実。
悠真: そして三つ目。Forbrukerrådet、ノルウェーの消費者庁みたいな機関がレポートを出した。製品が短命になってる。そして「品質と循環経済を標準にする」ための消費政策を提唱してる。
葵: これは、今日のDIYハードウェアの話と実はつながるんだよ。20ドルのホットスポットを転用して端末を作るっていうのは、「モノを捨てないで、別の用途に使う」っていう実践。
悠真: で、さっきの本を切る話ともつながる。Kirklandは、850ページの本を切る。それは「本を壊してる」んじゃなくて、「本を、読むために再生してる」。つまり、一つのモノを、寿命まで使い切るっていう考え方。
葵: まとめるとね。今日の話、全部、実は「技術が速くなる」っていう同じ流れの中にいて、その速さの上と下で、違う問題が起きてる。上では、AIの推論需要がチップを変えようとして、同時にセキュリティの穴と監視の常態化が進んでる。下では、オープンソースとDIYハードウェアが、個人がコントロールできる選択肢を守ろうとしてる。
悠真: で、最後の話題、本と発見と持続可能性は、その全部を「時間」のスケールで見直す話だった。本を切って読みやすくするのは、一つの本との長い付き合い方。1930年の発見は、「全部知られてる」っていう傲慢さへの牽制。製品寿命の話は、「速く捨てる」習慣への疑問。
葵: ということで、今日はここまで。AIの進化、セキュリティの現実、業界の変化、Javaと理論、オープンソースとシステム、DIYハードウェア、そしてモノと時間。
悠真: それぞれ、まだ決着がついてない話ばかりだから、また明日も続きがあるはず。今日も聞いてくれてありがとう。また明日。
葵: また明日。