
0815 | Going Darkと法執行ハッキングの時代、Firefox uBlock Origin継続、GLM-5.3発表、Google HEIR
Show notes
今回はHacker Newsで話題の技術ニュースを幅広く取り上げました。法執行機関によるハッキング時代「Going Dark」をめぐる自社ホスティング論、Googleが公開した準同型暗号コンパイラHEIRによるプライベートAIの実現可能性、そしてuBlock Originをサポートする最後のメジャーブラウザとなったFirefoxの話題。さらに、RSSフィードを電子ペーパーの新聞に変えてスマホから離れるプロジェクト、中国発の新モデルGLM-5.3の創発的なサイバー能力とQwen 3.8 27Bのローカル実行、DeepSeekのピーク/オフピーク料金改定、Opus 5の使いにくさをめぐる議論など、AI関連の話題も多岐にわたりました。そのほか、ソフトウェアのTEMU化を論じる意見記事、巨大なプルリクエストを自動却下するCIの提案、自作ゲームエンジンの価値、フランス最高裁による15歳未満SNS禁止の覆し、豪州の家庭用バッテリーによる卸売電力価格の半減、インドネシア沖M7.7地震と今年の地震頻度の体感についても議論しています。
タイムライン
- 00:00:00 オープニング
- 00:00:51 法執行機関によるハッキングの時代「Going Dark」
- 00:01:55 Googleの準同型暗号が実現するプライベートAI
- 00:04:24 uBlock Originを守る最後のブラウザ、Firefox
- 00:06:31 RSSフィードを電子ペーパーの新聞に
- 00:09:11 GLM-5.3が持つ創発的なサイバー能力
- 00:11:40 Qwen 3.8 27Bがローカル実行を実現
- 00:13:48 DeepSeekのピーク/オフピーク料金改定
- 00:15:48 Opus 5はなぜ使いにくいのか
- 00:18:23 ソフトウェアとデジタル財のTEMU化
- 00:21:27 巨大なプルリクエストを送らないで
- 00:22:41 自作ゲームエンジンを築くことの価値
- 00:26:15 フランス最高裁が15歳未満SNS禁止を覆す
- 00:27:34 豪州の家庭用バッテリーが電力価格を半減
- 00:30:36 インドネシア沖M7.7地震と今年の地震観測
関連リンク
- Going Dark, and the era of law enforcement hacking - Bri Hacker News Campaign Feed
- Google is making private AI practical with homomorphic encryption - Bri Hacker News Campaign Feed
- Firefox is now the last major browser that still supports uBlock Origin - Bri Hacker News Campaign Feed
- I turned my RSS feeds into an e-ink newspaper to stop reading on my phone - Bri Hacker News Campaign Feed
- GLM-5.3: Frontier coding with emergent cyber capabilities - Bri Hacker News Campaign Feed
- Qwen 3.8 27B - Bri Hacker News Campaign Feed
- DeepSeek peak/off-peak pricing update - Bri Hacker News Campaign Feed
- Why does Opus 5 feel worse to work with? - Bri Hacker News Campaign Feed
- The TEMU-Fication of Software, Digital Goods and Services - Bri Hacker News Campaign Feed
- Stop sending me huge PRs; a rant - Bri Hacker News Campaign Feed
- Soup Raiders goes native: What you gain by building your own game engine - Bri Hacker News Campaign Feed
- France's top court blocks social media ban for under-15s - Bri Hacker News Campaign Feed
- In Australia, a home battery boom has helped cut wholesale power prices - Bri Hacker News Campaign Feed
- Magnitude 7.7 Earthquake – 68 km NNW of Ende, Indonesia - Bri Hacker News Campaign Feed
このエピソードは Bri によって制作されています。Bri は高度な AI 技術で、あなたが気にかけるフィードを聞くためのポッドキャストに変換します。お問い合わせは hi@bri.so まで。
Transcript
葵: HackerNews Daily へようこそ。今日は、ポッドキャスト Bri がお届けするテック・トピックのダイジェストです。私は葵。
悠真: そして僕は悠真。今日は、法執行機関によるハッキング時代、Firefox と広告ブロッカー uBlock Origin の行方、そして注目の AI モデルやホームバッテリーの話題まで、幅広くお届けします。
葵: まずは、Google が進める準同型暗号を使ったプライバシー保護 AI の新たな取組み。そして、Z.ai の新モデル GLM-5.3 や DeepSeek の新バージョンにも触れます。
悠真: そのほか、RSS フィードを電子ペーパー新聞に変えたという試みや、子どもの SNS 利用を禁じる法律を巡るフランス最高裁の判断、オーストラリアの家庭用バッテリー普及まで。盛りだくさんでお届けします。
葵: 先週のブログ投稿が今Hacker Newsで話題になっています。タイトルは「Everything Is About to Go Dark」、つまり「もうすぐすべてが暗闇に包まれる」というもので、法執行機関によるハッキングの時代について論じています。読者は、これはソフトウェアを自分でホストして、自分が使うものを自分で管理する強い根拠になる、と話しています。さらにリプライでは、AIエージェントも含めて自分で管理すべきだ、ただしモデルが問題になってくる、と指摘されています。モデルに関する圧力はすでにある、あるいは今後確実に強まるだろう、という見方も出ています。
悠真: なるほど。「すべてが暗くなる」というのは、法執行機関が通信やデータに積極的にハッキングでアクセスする時代を指しているんですね。そうなると、自分のソフトウェアを自分で動かすという自衛手段の重要性が、一段と増してくる。ただ、AIエージェントまで自分で管理しろと言われると、モデル自体をどこから持ってくるのかという新しい難しさが出てくる。そこがこの議論の核心になりそうです。
葵: Googleが、準同型暗号を使ってプライベートAI推論を実現する新しいオープンソースのコンパイラを公開しました。HEIR、つまりHomomorphic Encryption Intermediate Representationという名前です。準同型暗号のポイントは、暗号化されたデータのまま計算を実行できること。サーバーは暗号文を処理して、暗号化された結果を返すだけで、中身の情報には一切触れません。
悠真: つまり、例えばクラウドサービスがユーザーの特徴を一切見ることなく、コンテンツ推薦を提供できるようになるわけですね。これはエンドツーエンド暗号化の大きなトレードオフを変える技術です。これまでは、データを暗号化するとサーバーが処理できなくなるのが当たり前でしたから。そしてハードウェアベースの解決策とは違って、この保証は純粋に暗号学的だという点が特徴的です。
葵: もちろん、計算コストは無視できないオーバーヘッドがあります。ただ、そのコストは急速に下がっていて、Googleは専用ハードウェアを作るいくつかの企業と提携しています。実際に4つのアプリを、処理時間の数値付きで公開していて、ソースコードも一般公開されています。不正検知や異常検知、音声のホットワード検出など、現実の用途が対象です。研究面でも多数の大学と協力していて、このコンパイラ上に構築された査読付き論文がすでに4本あるそうです。
悠真: ただ、Hacker Newsの反応の中心は、信頼と検証可能性をめぐるものなんですね。「暗号化されていようと、他人のサーバーにあるなら自分のものではない。Googleが自分の最善の利益を考えているとは信じない」という指摘に対して、投稿者は「完全準同型暗号なら、それは他人のものではない。このプロジェクトの基本アイデアは、信頼の必要性をなくすことだ」と応じています。一方で「Googleはエンジニアリングは得意でも信頼構築は苦手だ」と懐疑的な声も出ている。
葵: その議論では、あるコメント投稿者が、その懐疑主義は数十年にわたる暗号学の進歩への敬意を欠いている、と批判していました。古典的な暗号は、インターネットサービスプロバイダを内容を知らないただのパイプにするために設計されてきた、という文脈です。また別の人が指摘していたのは、機密性と可用性の違い。暗号化すれば中身は守られるけれど、アカウントが誤ってブロックされたらアクセスを失う可能性は残る。なので、問題は暗号の信頼性ではなく、自律性を放棄することだという見方もあります。
葵: Firefoxが、広告ブロック拡張機能uBlock Originのサポート継続を正式に表明しました。「私たちのuBlock Originへのサポートはどこにも行かない」という発表です。これが意味を持つのは、まもなくMicrosoft Edgeが、uBlock Originを含む古い世代の広告ブロック拡張機能をロックアウトしようとしているからです。
悠真: EdgeはChromiumベースですよね。Manifest V2からV3への移行はGoogleがChromeで始めたもので、Edgeがそれに追随した。V3になると、広告ブロック拡張機能はサイト閲覧中や動画視聴中の広告を適切に識別してブロックするために必要な機能にアクセスできなくなる、ということです。つまりEdgeに移行したら、uBlock Originは機能しなくなる。結果として、記事が指摘するのは、FirefoxはChromium非ベースの数少ないブラウザの一つで、uBlock Originをサポートする最後のメジャーブラウザだということです。SafariもDuckDuckGoもサポートしていませんから。
葵: Blueskyでは、「これは正式にFirefoxのキラーアプリだ。FirefoxでuBlock Originがサポートされている限り、Chromeには戻らない」という投稿も話題になっています。ただ、Hacker Newsでは別の視点もありました。ある人は、誰でも拡張機能にできることを何でもできるカスタム拡張機能を作れるんだ、と言って、自分はかつてChromeに必ず入れていた7つほどの標準拡張機能を、AIツールを使って過去1か月で単一のカスタム拡張機能に統合したと報告しています。ただ、これに対しては、それがまさにGoogleがV3に移行した理由だという指摘もあります。拡張機能は以前ほど多くのことができなくなった、というわけです。
悠真: つまり、単にFirefoxに逃げるという選択肢だけでなく、拡張機能の作りそのものが変わってしまう大きな移行期なんですね。Edgeまでもが同じ道をたどるとなると、Chromium系を使う限り、広告ブロックの世界は明確に変わってしまう。その状況の中で、Firefoxが古い仕組みを維持し続ける唯一の大物である、というのが今回のニュースの意味づけです。
葵: ある開発者が、自分のRSSフィードを電子ペーパーの新聞に変えて、もうスマホで読まないようにした、というプロジェクトが話題になっています。この方は個人ブログを娯楽と学習、そしてソフトウェアエンジニアリングの最新トレンド追跡のために読んでいて、ソファやデッキチェアで横向きにリラックスして読みたいから、パソコンではなくほぼ常にスマホで読んでいたんですが、目が疲れるのが不満でした。
悠真: そこで見つけたのが、ポケットサイズの電子ペーパーリーダーです。大きさは4.3インチで、タッチスクリーンもバックライトもプリインストールされた書店もない、シンプルな端末。そこにコミュニティが作ったオープンソースのファームウェアを入れます。中国からドイツへ発送してもらったそうですが、税関で止まる心配をしつつも無事届き、標準ファームウェアはすぐに嫌になって、3クリックでオープンソース版をインストールしたそうです。
葵: そしてRSSリーダーのAPIから未読の投稿を取得して、既読にして、電子書籍形式に変換する仕組みを作りました。YouTubeやJavaScriptを多用するブログ、リンクだけのニュースレターなど、電子ペーパーに向かないフィードは除外したそうです。このプロジェクトは「feedpaper」として公開されていて、インストールも簡単。完成したデータを端末に入れて、スマホを家に置いたまま、屋外のカフェでラテと一緒に読書した、というのが成功体験です。
悠真: ちょっと贅沢な読書環境ですね。ただ、Hacker Newsの議論はもっと深いところにありました。ある人は、まともなRSSクライアントの欠如こそが、電子ペーパー端末ではなくiPadを使い続けている大きな理由だと言っています。別の人は、どの国の日常もスマホに依存していて、銀行アプリ経由の強い認証が必要だから、完全にスマホを家に置くことはできない、と指摘。一方で、毎朝コーヒーショップにこの手の端末とスマホを持ち込み、スマホはポケットに入れて通知をオフにして1時間読書する習慣を作った、という人もいます。
葵: その議論で共有されていたのは、スマホの誘惑を断つための工夫ですね。時間の無駄になるアプリだけを厳格にブロックする設定。ただし設定を解除するには150文字ほどのランダムなコード入力が必要なので、わざと摩擦を大きくしている。あるいは表示を白黒にして、画面の面白さを消してしまうという手法もあります。バンクのためにスマホが必要だという主張そのものに疑問を呈する人もいました。要するに、電子ペーパーで読むというのは単なる道具の話ではなくて、スマホとの付き合い方をどう変えるかという、身近で実りある試みの一つとして受け止められていたんですね。
葵: 中国発のAIラボ、Z.aiが今週、コーディングとサイバーセキュリティ向けの新モデルGLM-5.3を発表しました。今回の重要なポイントは、基盤モデルが前作のGLM-5.2から変わっていない点です。つまり新しい能力はすべて、学習後の調整、いわゆるポストトレーニングによって生み出されたということですね。
悠真: その調整の成果が数字に表れています。Z.ai独自のコーディングベンチマークではGLM-5.2比で50パーセントの改善。公開ベンチマークでも、ターミナル操作を伴う実務型の「Terminal Bench 3.0」で28.3点、前作の4.6点から大きく伸びています。ただし、他の先端モデルと比べると、Opus 4.8が21.1点、GPT-5.6 Solが34.6点、Fable 5が33.7点となっており、まだトップには届いていません。
葵: サイバーセキュリティ分野はむしろ注目です。Z.aiはこの分野の能力が「創発的」に現れたと説明しています。脆弱性発見のベンチマークで最高スコアを記録し、エクスプロイトチェーン、つまり一連の攻撃手順を組み立てる上流部分ではGLM-5.2の2倍以上の性能を達成したと主張しています。ExploitBenchと呼ばれる攻撃コード生成の評価では54.4点で、前作の24.4点から倍以上に跳ね上がっています。
悠真: ただ、実用上のハードルもあります。重みはローンチから2週間後、安全性評価とハードニングが終わった後に公開する予定で、サイバー能力が強化されているだけに、その扱いが論点になっています。
葵: Hacker Newsの議論では、モデルの選択が難しくなったという声が出ていました。今日はリリースが多く、複雑な実ユースケースで全部を試さない人には、価格以外の判断基準が分かりにくいという指摘です。別のユーザーは、前作の5.2は堅実だったものの、セキュリティ監査能力に関してはOpus 4.8にあと一歩及ばず、特に米系ベンダーがセキュリティ業務に最高モデルを使わせてくれないため、主にKimi K3を使っていると話しています。
悠真: 一方、ガードレールの在り方をめぐる議論も活発でした。OpenAIとAnthropicがサイバー向けモデルへのアクセスを制限すれば、小規模な防御側だけが不利になるという主張や、現行のガードレールは馬鹿げているとして、自分のプロジェクトでも攻撃者に限らず基本的なトリアージにKimiやGLMへの切り替えを迫られたという実務者の声も出ていました。
葵: 次に、中国のQwenシリーズの新モデル、Qwen 3.8の27Bパラメータ版が量子化済みの形でHugging Faceに公開され、大きな注目を集めています。これは重みをFP8という圧縮形式に量子化したもので、これにより一般ユーザーのローカルマシンでも動かしやすくなっています。性能は元モデルとほぼ同一とされ、ライセンスは商用利用可能なApache-2.0です。
悠真: このモデルは画像と動画を理解できるネイティブな視覚言語モデルで、コーディングや専門業務、研究、長期的なエージェントタスクでの向上が謳われています。つまり、複数ステップのタスクを自律的に計画し、環境からのフィードバックを処理して最後までやり遂げる信頼性を高めた設計です。
葵: Hacker Newsでは、このサイズ感への期待が話題の中心でした。あるユーザーは、コンシューマーハードウェアで動かすサイズと知能の最良の妥協点だと表現していて、ノートPCで実際に実行できるという評価も上がっています。投稿者自身も、ほとんどのユースケースは最先端モデルを必要としないため、これが最も重要なリリースの一つだと主張しています。実際、ローカル実行のための設定ファイルも公開されました。
悠真: 小規模モデルの使い道についても具体的な声が出ていました。分類や情報検索、画像の説明、ソフトウェアのツール呼び出しを使うエージェントシステムなどで、特にフィードバックループの中で小さなモデルがどれほど印象的かという指摘がありました。Web検索からデータを取得してアクションを実行するような定型タスクや、曖昧な形式のデータをデータベースやスプレッドシートに整形する用途、ニュースのダッシュボード生成などには小モデルが最適だという意見です。
葵: 一方で、本格的なコーディングが目的ならクラウドの方が良いという意見もあります。ローカルで動かすと、量子化した状態でコンテキスト長に応じて毎秒12から30トークン程度で、やや遅めだからです。今後のシグナルとしては、クラウドでのホステッド版がデフォルトで100万トークンのコンテキストに対応して間もなく公開される予定なほか、より大きなバージョンの登場を期待する声も上がっています。
悠真: 続いて、DeepSeekがV4 Proを正式リリースし、同時にAPI料金の改定を発表しました。注目すべきは、時間帯に応じて料金を変えるピーク・オフピーク方式の導入です。オフピークの料金はピークより50パーセント安く、新しい料金は8月16日から適用されます。ピーク時間帯は日本時間に換算すると午前と夕方の帯に相当します。
葵: この価格改定に、特に利用者の反応が割れました。あるユーザーは、ピーク時のFlashモデル料金が出力トークンあたり1.32ドルで、従来の0.28ドルから大幅な値上げとなり、最安プロバイダーの0.16ドルと比べるとほぼ一桁高いと指摘しました。一方で、オフピークは半額になり、多くの欧米の職場は安い時間帯を利用できるという反論もありました。
悠真: ピーク時間帯の設定が中国の就業時間に当たる点から、DeepSeekの顧客は主に国内向けではないかという推測も出ています。実際、米国や欧州のユーザーにとってピーク時間は夜か早朝に当たるため、太平洋時間の夕方に当たる時間帯は仕事帰りの趣味ユーザーに影響するという指摘もありました。
葵: さらに広い文脈での議論もありました。企業が単一プロバイダー、通常はAnthropicに集中する傾向が見られる一方で、中国製モデルをローカルで実行することさえ許されないかもしれないという声や、それはLLMの仕組みを理解していない人が書いたポリシーのように聞こえるという批判も出ていました。実務的な視点では、多くの企業が最初は単一モデルで始め、ユーザー数が150人規模に達してAPI料金の支払いが始まるとすぐに他のモデルも導入し始めるという観察もありました。
悠真: まとめると、V4 Proの正式リリースは能力面のアップデートだけでなく、料金体系そのものを変える戦略的な動きといえます。米国の顧客の多くは、重みが公開されれば国内プロバイダーに移行するだろうという見方もあり、価格とモデル選択がますます絡み合っている状況です。
葵: 最後に、AnthropicのOpus 5に関する議論です。あるブログ記事が「Opus 5を使っていて、なぜ以前より使いにくいと感じるのか」という問いを立て、大きな反響を呼びました。結論から言うと、これは能力の後退の話ではありません。むしろ能力は高く、ベンチマークでは競合のFableに匹敵する一方、実際の作業では他のモデルの方が扱いやすいと感じる人が多い、というのが著者の見解です。
悠真: その理由として注目されたのが、不確かな状況での振る舞いの違いです。他のモデルは意図が不明確な時に立ち止まって質問し、確認なしに仮定せず、計画を勝手に更新しないのに対し、Opus 5はそうではなく、使う側が常に注意深く見張る必要があると述べています。著者の推測では、自己改善AIを目指す野望と、ベンチマークで高得点を取りたいという圧力が重なり、モデルがあいまいさに直面すると大胆で通常は正しい仮定をするよう訓練された結果、確認を求める傾向が弱くなったということです。
葵: 実際のコーディングエージェント利用では、文脈や意図、ビジネス上の含意、予算制約などをすべて書き出すのはほぼ不可能で、あいまいさは避けられません。ベンチマークのタスクは自己完結的で解けるよう設計されている一方、現実はそうではない。だからこそ、と著者は「現実はベンチマークではない」と結んでいます。
悠真: Hacker Newsの議論では、この印象に同意する声が複数ありました。英語以外を母語とするユーザーからは、非英語で話しかけると単語を近似するようなミスをする傾向があるという報告や、結果がほぼ常に悪いため英語以外でAIに話しかけるのを避けているという声も出ていました。
葵: 一方、コード品質の面では意見が分かれました。あるユーザーは、あるバージョン以降コード出力の品質が劇的に低下し、完了までの時間も悪化したと主張しました。高速モードは2倍速ですが、その分コストが非常に高く、会社では手が出せないため、経済性のための賢い修正によって大幅なダウングレードが起きていると述べています。しかし別のユーザーは真っ向から反対し、Fable 5はClaudeに作業を引き渡す能力が優れていると評価していました。
悠真: この議論の本質は、モデルがベンチマークで良い成績を取ることと、実際の開発者との共同作業で信頼できることの間に、まだ深い溝がある事実を示しているように思います。あいまいさをどう扱うか、費用と速度をどう妥協するかは、今後もモデル選択の中心的な判断基準になりそうです。
葵: Hacker Newsに「ソフトウェアのTEMU化」という意見記事が話題になっています。著者自身が「まだ来ていない未来についての推測であり、証明できない仮説だ」と明言している、あくまで意見記事です。TemuやSheinが、生産を十分安く、十分速く、電話の画面で良く見える程度に仕上げることで、10ドルのドリルや2ドルのドレス、1ドルの靴という市場を成立させました。同じ現象が、ソフトウェアや書籍、音楽、映画の脚本にまで起きるのではないか、というのがこの記事の論点です。その場合、安価な労働力の役割を担うのは人間ではなく、いわゆるAI、要するにLLMで、外部化されるコストは「品質」だとしています。結果として、大量生産された質の低いコンテンツが安価で漂う巨大な下位層と、人間が作ったと分かる高価な上位層という、二層の市場になると予測しています。
悠真: この記事は、Amazon Primeの配送高速化と比喩的に並べ、Temu隆盛の前提だった「Amazon Prime時代のソフトウェア」に何があったのか、という問いを投げかけていますね。これに対して、Temuの成功はAmazonの道を歩んだのではなく、「裏口侵入」だったという反論が出ています。規制や政治的な無関心、中国の巨額なGDPに支えられた極端に補助金が付いた郵便料金、それから輸入関税の不徹底な執行、つまり申告価格が正確かどうか疑問が残る点、そして安全基準が実質的に執行されていないこと。こうした条件があって初めて成り立ったのだという指摘です。
葵: また、この現象を「ギャンブル化」になぞらえる意見もありました。あるコメントでは、Temuの割引ルーレットが嫌で一度も買ったことがないと語りつつ、安価な生成コンテンツにも似た感覚を覚えるとしています。何かが元を取ってくれるという賭けのようなものだ、と。それを「エンシットフィケーション、テムフィケーション、ギャンブリフィケーション」と表現していますね。別の人は、そのルーレットが「ドーパミン迷宮」に引き込み、15分も無駄にした経験があると話しました。さらに、400ドルのクレジットが実際には小さな割引の積み重ねで、8回の注文が必要になる仕組みだという補足もあります。
悠真: 「人間が作ったものが自動的に優れているわけではない」という意見もありますが、これに対しては、特定のサービスの中で1万回の部分修正を経て成長し、1万行に達した関数が、誤解を招く大量のコメントとともに1万5千行に膨れ上がった、という具体例が挙げられました。そして、理解への苦闘を経験しないLLMは、バグと腐敗を無限に積み重ねるだけだという主張です。一方で、人間のコードにも同じような問題はあるという反論もありました。小規模なコードベースに多数のコミッターがいて、テストがなく、変更に時間がかかる、といった実例ですね。これに対して、「動けばいい」と出荷してしまう人間も多い、理解するのは人間の仕事だという応答もありました。この議論を聞くと、生成コンテンツの品質をめぐる根本的な評価の分かれ目が見えてくる気がします。
悠真: 話は変わって、Hacker Newsで「大きなプルリクエストを送るのをやめてください」という記事が議論になっています。プルリクエストというのは、コードの変更をレビューしてもらうための仕組みですね。件名からすると、これは中堅からベテランのエンジニアなら誰でも心当たりのある、日常的な痛みを扱った話題のようです。著者自身は、まだ実際に試してはいないアイデアとして述べているんですが、AIエージェントはCI、つまり継続的インテグレーションの失敗など、技術的な制約を理解できるかもしれない、という発想が起点になっています。
葵: 具体的にはこんな提案です。CIのジョブとして、プルリクエストのサイズが妥当かどうかをチェックし、もし大きすぎれば、丁寧なメッセージとともに自動で却下する。例えば「このプルリクエストは、レビューを受け付ける上限のN行を超えています」というような案内を返す、という仕組みですね。つまり、人間のレビュアーがイライラしながら指摘する代わりに、機械的なルールとして事前に線を引くという発想です。大きなプルリクエストを送られて困っている人にとっては、これは一つの現実的な緩和策になりそうです。このツールの提案が、単なる愚痴ではなく解決策まで含んでいる点が、議論を呼んでいる理由の一つかもしれません。
葵: 次は、自分のゲームエンジンを作ることの価値についてです。Hacker Newsで「Soup Raiders Goes Native」という記事が議論されていて、著者は自社製エンジンの開発から得られるものを論じています。根拠として挙げられている数字によると、Steamで2024年にリリースされたゲームの約13%がカスタムエンジンを使っていて、2012年の71%から大きく減っています。ただ、逆にそれらのゲームは2024年の販売ユニットの43%を占めたのだそうです。つまり、数としては少数派でも、売れる作品の多くは自社製エンジンで作られている、というわけです。
悠真: この記事は、カスタムエンジンの定義も具体的に示しています。例えば、SDL3とAssimpで作る3Dゲームや、SFMLで作る2Dネットワークゲーム、DX12でレンダラを自作してWindows APIでウィンドウを開くようなものはカスタムエンジン。一方で、Unityに社内ツールを組み合わせたり、Unrealのレンダラを書き換えたり、GodotにC++拡張を加えたりするのは、カスタムエンジンではないとしています。BastionやFTL、Don't Starve、Stardew Valley、Factorioといった有名な自作エンジン作品のリストも並んでいますね。ただし記事は、特定の用途では可能だが、個人や小規模チームが汎用目的でUnityやUnrealと競うことはできない、という現実的な見方も示しています。
葵: 議論の中心になったのは、この13%という数字の解釈です。あるコメントでは、このグラフは「その他」と分類された13%であって、それがすべて自作エンジンというわけではない、と指摘されました。ソフトウェア業界には他にも多くの既製エンジンがあるので、すべてをエンジンごと自作するゲームはごくわずかだ、という主張です。これに対して、MinecraftやBraid、Dwarf Fortress、Stardew Valley、Animal Wellといった成功したインディー作品や、ほとんどのAAA規模、多くのAA規模のスタジオも自作をしている、という反論が来ています。SourceやUnrealだって、もともとはゲームであって、後からエンジンとして切り出されたものですからね。
悠真: 一方で、これは生存者バイアスではないかという見方もあります。SourceやUnrealの時代には、プレイヤーの要求やグラフィックの要求が今よりずっと低く、エンジンを作るのが今より簡単だった、という指摘です。エンジンには一定の「スタイル」があって、デフォルト設定やアセットストアの既製品を使うと判別できる、と認めつつも、大半のインディーは自作していないし、記事のリストにも「OGREベース」や「MonoGameベース」と注記された作品が多数含まれている。それはカスタムエンジンというより、変わったエンジン選びと調整だ、という見解もありました。真に独自のエンジンを使ったゲームの正確な数は不明で、13%は上限であって、実際には5%未満かもしれない、と。これに対しては、記事のソースでは「その他」はカスタムエンジンを意味しているという反論も出ています。この数字の解釈をめぐる攻防は、まだ平行線が続きそうです。
葵: エンジン選びをめぐる見解も多様でした。例えばStardew Valleyが使うMonoGameは、技術的にはフレームワークの分類ですが、現実的にはエンジン開発の仕事の大部分を担っているという指摘もあります。結局はニーズ次第というのがおおかたの結論になりそうで、Unity製の『Skate Story』のように一人の開発者でも成功している例がある一方で、独自の見た目や手触りにこだわるなら自作エンジンが意味を持つこともある。どの選択が正しいかは、作るゲームとチームの規模次第、というのがこの議論が落ち着く先のような気がします。
悠真: 最後は、フランスの最高裁判所の判決に関する議論です。Reutersの報道によると、フランスの最高裁が、15歳未満のソーシャルメディア利用禁止を覆したと伝えられています。この禁止措置は表現の自由を制限する、というのが判決の理由です。つまり、未成年者の保護という政策目的は理解できても、全面禁止という手段が憲法上の表現の自由とのバランスを欠く、という判断だったわけです。
葵: この話題には、寛容な対応を求めるコメントが届いています。一つの提案としては、両立が可能な道がいくつもあるので、完全禁止にはしない方がいい、というものです。具体的には、明らかに15歳未満の子どもの写真をソーシャルメディアにアップロードさせない、という制限にすれば、多くの課題は解消できるのではないか。加えて、こうした企業は広告データや位置情報などから、利用者の年齢についてかなり多くのことを把握している、という指摘もありました。つまり、プラットフォーム側には技術的に未成年を判別できる情報がすでに存在するのだから、全面禁止ではなく、より限定的な保護策を技術的に実装できるはずだ、という見方です。全面禁止か、それともより繊細な保護策か、というバランスの取り方が、この判決が投げかけた問いの本質なのだと思います。
葵: 先ほどの予告どおり、まずはオーストラリアの家庭用バッテリーのおはなしから。1年余り前に始まった手厚い補助金プログラムで、政府は金曜日に、すでに50万台以上のバッテリーが設置されたと発表しました。この計画が卸売電力価格を「およそ半減」させる一因になったとしています。
悠真: エネルギー相のクリス・ボウエン氏は記者会見でこんな言い方をしました。「オーストラリアにはアメリカより多くの家庭用バッテリーがある。アメリカの人口は12倍だ」と。そのうえで「オーストラリアの家計が達成した、世界的意義のある物語だ」と語っています。
葵: そもそもオーストラリアは屋上太陽光の普及率が世界最多で、3世帯に1世帯以上にパネルが付いています。ただ、その分、余剰の太陽光によって電力価格の暴落や集中型発電所の停止、系統の安定性への脅威、そして太陽光の浪費といった問題が起きていました。
悠真: そこで政府は、クイーンズランド、ニューサウスウェールズ、南オーストラリアの住宅所有者に、太陽光パネルの有無を問わず、午後早い時間帯の電力を無料で提供し、家電やEV充電を促しています。補助金プログラム自体は2025年7月に始まり、太陽光設備に接続する家庭用蓄電池システムを30%割引する内容です。
葵: 当局の説明では、夕方のピーク時に家計がバッテリーを使うことで、追加の発電所を起動する必要が減り、他の料金支払い者のコスト削減にもつながっているんだそうです。ボウエン氏は、この補助金が過去12か月の卸売エネルギー価格の47%下落の主因だと評価し、世界的なエネルギー危機の中で卸売価格を下げている国はごくわずかだと述べています。
悠真: 率直に言って、私がこの話題でいちばん面白いと思ったのは、Hacker Newsでの議論ですね。家庭用バッテリーは不要で、何百万台ものEVをエネルギー貯蔵層として使うべきだと主張する人に対して、EVは日没後に充電される傾向があり、日中は仕事か運転中だと反論が返っていました。
葵: その流れから、EVを太陽光の蓄電に使うのは、バッテリーの化学特性が高サイクル向きではない、という指摘も出ましたね。一方で、これらのバッテリーは容量80%を保持したまま10万回の充放電が可能だという反論もありました。現実には、オーストラリアでは家庭用バッテリーとEVの夜間充電が並行して行われていて、つまり日中に屋根の太陽光から充電した家庭用バッテリーの電気を、夜間にEVが使っている、という話も紹介されていました。
悠真: そして、ある投稿者は、太陽光と蓄電の普及は「この生涯で最良の政府インフラ投資」だと評していました。周波数調整まで、かつてはガスが担っていた役割を、いまはバッテリーが担うようになった、と。ただ、車両から家庭へ給電する双方向充電については、まだ実現していないものの、電力を家の外に逆流させるには配電事業者レベルでの調整や見える化の問題が残るという指摘もありました。
葵: 次は、インドネシアを震源とする大きな地震の話題です。USGS、アメリカ地質調査所の情報では、マグニチュード7.7の地震が、エンデの北北西およそ68キロ地点を震源として発生しました。
悠真: Hacker Newsでは、その議論が「今年は大きな地震が多い気がする」という体感の共有から始まったんですね。ある人は、大きな地震は余震を除けば事実上ランダムだと理解しつつも、やはり今年は多い気がする、と投稿しました。すると、別の人がウィキペディアの地震リストを引いて、「この10年でマグニチュード7.0以上の地震は76回、うち今年は10回」だと報告しています。
葵: 2026年の地震リストを調べた人もいて、「必ずしも前年より悪いわけではない」と判断していましたね。さらに「Hacker Newsが今年多く取り上げているだけだ」と指摘するコメントも出ていました。つまり、体感ほど異常は起きていない、という話ですね。
悠真: データの解釈をめぐる面白いやりとりもありました。ある人が参照していた地震のページには「今年のマグニチュード2.5超の地震が0回」と表示されていて、なぜだろうと疑問が上がったんです。このページの注記によると、2020年頃以降、地震の総数の増加は、観測点の数が増えて小さな地震、具体的にはマグニチュード0.5以下まで検出できるようになったためで、マグニチュード1.0以上に限れば発生率はほぼ横ばいなんだそうです。
葵: 津波を心配していた人もいました。「この規模で津波は発生するのか。おそらく小さな局地的なものだけかもしれないが、ロンボクからバリへのフェリーに乗る予定で、この2週間で既に2隻が焼失している」という投稿です。これに対して、津波は海岸近くでのみ問題になり、外洋ではかろうじて穏やかな波程度で、警報が出たときは沖に出るのが最も安全だ、という説明が返っていました。
悠真: さらに別の人は、外洋のフェリーは津波の間、いちばん安全な場所の一つだとも言っていました。サーフィンのような大きな波ではなく、水位が徐々に上がっていくものだから、と。一方で、ある投稿者は「可能性のある津波」の予告と、レンバール付近の潮位計に海面の振動を確認したと述べつつ、Hacker Newsのコメント欄より良い情報源を注意深く監視するよう薦めていました。乱れた情報が飛び交う状況だからこそ、落ち着いて確実な情報源に頼るのが賢明だという、その結論がこの話題の締めくくりにふさわしいですね。
葵: さて、今日はここまでです。冒頭でお伝えした通り、今回は「Going Dark」、すなわち法執行機関によるハッキングの時代をテーマに、暗号化と捜査の新しいせめぎ合いをじっくり考えました。
悠真: 合わせて、Googleの完全準同型暗号を使ったプライバシー保護AIの取り組みや、FirefoxがuBlock Originのサポートを続けるという報告、e-ink新聞でスマホから離れるという試み、そしてGLM-5.3やDeepSeek-V4-Pro登場といった最新モデルの話題まで、幅広く取り上げました。
葵: インドネシアのマグニチュード7.7の地震や、オーストラリアの家庭用蓄電池の普及といった話題も含め、技術と社会、暮らしが交差するニュースをいくつか。今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。また次回お会いしましょう。